檀家制度

 檀家制度は江戸時代の徳川幕府の政策で、西欧からの侵略と封建社会の秩序を乱す可能性があると判断されたキリスト教を弾圧するために、1635年にはじまりました。これにより、人々は信仰の有無にかかわらず、家単位で強制的に寺院の信者にさせられたのです。本来、自分自身で選んだ特定の寺院に集い、信仰を深めていくことで、信者と寺院の関係は築かれていくものであることを思い起こすと、檀家制度が仏教本来の制度でないことは明らかです(どこの家にもお仏壇が置いてあるようになったのもこの制度からだと言われています)。

 檀家制度における寺院の主な役割は、人々が結婚や就職、転居などをする際に、キリスト教の信者ではなく仏教徒であることを証明する寺請証文を発行することでした。このように、キリスト教の弾圧を目的としていた檀家制度はやがて、仏教を利用して民衆を管理・支配するための制度として、徳川幕府の維持になくてはならない制度になっていきました。と同時に、この制度は寺院にとっても歓迎されました。

 なぜかというと、檀家制度のおかげで寺院は教化活動をしなくても一定の信者を確保することができるようになったからです。つまり、食べることに困らなくなった(葬式坊主のはじまり)ばかりか、寺請証文の発行をちらつかせて信者に必要以上の寄付を強要したりできるようになったからです。さらに、徳川幕府の後ろ盾による特権意識にどっぷりと浸かってしまった寺院は、どんどん堕落・腐敗していったのです。そのように俗化・堕落している上に、指導者面をして威張っている僧侶を、江戸時代の人々の多くは、陰では冷ややかな目で見ていたといいます。

 幕府の政策とはいえ、このように堕落してしまった寺院の歴史を私事として深く反省したいと思います。そして、人生のより所となる仏教本来の魅力をお伝えできるよう、今後も教化活動に励みたいと思います。    

※檀家制度は江戸幕府の崩壊とともに廃止されました。


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