西暦476年に中国に生まれた曇鸞大師は、仏教を深く学ぶためには不老長寿になることが必要と考え仙経を学ぼうと努力しましたが、やがてインドの菩提流支という僧から『仏説観無量寿経』を与えられたことがきっかけで、浄土教に帰依されました。その後、インドの天親菩薩の『浄土論』を註釈した『浄土論註』を著し、阿弥陀如来の力には、煩悩に苦しむ私たちを浄土に往生させようとする往相回向と、この世でまだ迷っている人々を救うため、一度往生した人に浄土からこの世に戻って活躍させる還相回向の二つのはたらきがあるとして、往・還のどちらも阿弥陀如来の本願の力(=他力)によることを明らかにされました。 本師曇鸞梁天子 常向鸞処菩薩礼 三蔵流支授浄教 焚焼仙経帰楽邦 (『正信偈』より) 《意訳》 雲鸞大師は、梁の武帝が常に菩薩と仰がれた方である。菩提流支三蔵から浄土の経典を授けられたので、仙経を焼き捨てて浄土の教えに帰依された。天親菩薩の『浄土論』を註釈して、浄土に往生する因も果も阿弥陀仏の誓願によることを明らかにし、往相も還相も他力の回向であると示された。「浄土へ往生するための因は、ただ信心一つである。煩悩具足の凡夫でもこの信心を得たなら、仏のさとりを開くことができる。はかり知れない光明の浄土に至ると、あらゆる迷いの衆生を導くことができる」と述べられた。 (本願寺出版社『顕浄土真実教行証文類』より) |