兵戈無用
ひょうがむよう

今から振り返ると、2001年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロ事件は、イラク戦争をはじめ、世界各地で頻発するテロ事件などの、すべての引き金だった気がします。

あれから4年目の9月11日。世界中のすべての人々の命が尊ばれる世の中を思いながら、「9.11」の犠牲者を追悼する音楽法要をおつとめしました。

 きっかけは、「世界中みんな幸せになる」という歌詞をひたすら繰り返す、聴いていてとてもやさしい気持ちになれる曲との出会いでした。この曲をはじめて聴いたとき、「すべての人を仏にする」と誓い、私たちのために日夜呼びかけ続けている阿弥陀如来の願い《本願》と似ているな、と思いました。それで、そんな阿弥陀如来のことが説かれているお経を、その曲に合わせて読んでみたくなったのです。

音楽法要で読んだ経文は、「仏教の精神が行き渡るところは、国は豊かになり、人びとも安心して暮らし、武器をとって争うこともなくなる(兵戈無用)。人は人間らしさを回復し、礼儀正しく、互いに思いやる社会ができあがるだろう。」という仏説無量寿経の一節です。

 今から約2500年前にお釈迦さまによって説かれた教えと、現代の音楽家が生んだ音楽とが渾然一体となって、世の中の安穏を思う気持ちが本堂いっぱいに満ち溢れた、初秋の夜でした。(合掌)


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