御文章


 先日、ある方から絵手紙をいただきました。最近はパソコンや携帯電話での手紙《メール》のやりとりが多くなっていますので、とても新鮮でした。手書きのお手紙の持つあたたかさっていいですね。今回は、浄土真宗のお手紙「御文章」についてご紹介します。 

 御文章とは、本願寺の8代目の代表である蓮如上人(1415〜1499)が、浄土真宗の開祖・親鸞聖人の「阿弥陀如来におまかせする気持ち一つ起こすだけで、老若男女問わず、俗世間の生活のままで救われる」教えを広めるため、わかりやすい文章にして人々に与えられたお手紙のことです。一般的に「おふみさん」と呼ばれていますが、正式には、大谷派(お東)では「御文」、本願寺派(お西)では「御文章」と呼ばれており、おもに、お仏壇の左側(蓮如上人の絵像が掛けられている側)に置いてある、玉手箱のような黒塗りの箱に収められています。
 蓮如上人が46歳の頃から書き始められたこのお手紙は、浄土真宗の「やさしい解説書」的な役割を果たし、つぶれかかっていた当時の本願寺にとって、のちに浄土教を代表する大教団として再興する原動力になりました。本願寺教団はこの功績を讃え、蓮如上人のことを「中興の祖」と呼んでいます。
 ちなみに、お経をおつとめした後に、御文章を拝読するようになったのは、蓮如上人が大阪の堺においでになった頃に、自分の手紙を門徒の方々に読んで聞かせたのがはじまりだと言われています。

 手紙の良いところは、あとで何度でも読み返せるところと、どこにでも持ち歩けるところ、そして、書いた本人がこの世からいなくなっても、その人の思いが、後の世の人にも伝わるところではないでしょうか。
 


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