〜世界に一つだけの《いのち》〜


 四月八日はおシャカさまの誕生日。仏教ではこの日を『花まつり』といって、おシャカさまのお誕生をお祝いする習慣があります。今から約二千五百年前にインドにお生まれになったおシャカさま。その誕生の様子は経典の伝えるところによれば、生まれるとすぐに七歩あるいて(!)天と地を指さし、「天上天下、唯我独尊」と言われたそうです。この言葉は「自分だけが尊い」という意味ではなく、「人間は一人一人最高に尊い存在である」という、人間の尊厳を意味する言葉なのです。ところで、生まれたての赤ちゃんが七歩あるいてしゃべるなど、普通に考えたらありえないことです。そこは、人間の苦悩を解決し仏となられたおシャカさまですから、のちの仏伝編集のときに作られたものかもしれません。六歩は、迷いの六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上の六つの世界)をあらわしており、七歩あゆまれたということは、その迷いの六道をこえて、さとりの世界に踏みだすことをあらわしているそうです。
 人気アイドルグループSMAPの新曲に『世界に一つだけの花』という歌があります。じつはこの歌詞の内容が、おシャカさまの「天上天下、唯我独尊」の言葉を、たいへん分かりやすくあらわしているなぁと思いましたので、ここにその一部を紹介します。

花屋の店先に並んだ いろんな花を見ていた
ひとそれぞれ好みはあるけど どれもみんなきれいだね
この中で誰が一番だなんて 争う事もしないで
バケツの中誇らしげに しゃんと胸を張っている
それなのに僕ら人間は どうしてこうも比べたがる?
一人一人違うのにその中で 一番になりたがる?
(中略) 
小さい花や大きな花 一つとして同じものはないから
No.1にならなくていい もともと特別なOnly one

(『世界に一つだけの花』 作詞:槇原敬之 発売元:ビクターエンタテインメント株式会社)


 なのに、人は争いごとをくり返します。だからこそ、阿弥陀如来はそんな愚かな私たちを救わずにおれないと、はたらき続けられていることを、おシャカさまは教えてくださったのではないでしょうか。     


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