ちゃんと大人をやってよね!
 先日、小学五年生の息子から、「お父さんもぜひ読んで!」と、一冊の本を手渡されました。本のタイトルは『ハードル〜真実と勇気の間で〜』。
 上下二巻セットのハリーポッターを三日で読破してしまう息子に比べ、「超」が付くほど読書が苦手な私ですが、この本は「あっ」と言う間に読めてしまいました。こんなに夢中&熱中して本を読んだのは、コリアンジャパニーズの金城一紀さんが書いた『GO』以来です。
 では、本のあらすじをご紹介します。

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 主人公有沢麗音は、小学六年生のある日、万引きをした優等生のクラスメート、浜田博の心の闇に出会います。「ぼくは、冬のセミだ。」という博に、麗音は強く共感します。ともに私立中学受験をひかえて、親の管理のもと、心のストレスをかかえていました。学校の執拗な犯人さがしに、博は自分の身を守るために、麗音を犯人と密告してしまいます。親や教師の対応に、麗音の心は深く傷つきますが、友人の存在と文房具店のおばあさんの言葉にすくわれて、心のかがやきをとりもどします。
 やがて、中学生になった麗音は、父の失職と両親の別れに直面します。東北の城下町にある母の実家に、弟の佑樹と身をよせる麗音を、大きな悲しみのうずがのみこんでいきます。いじめの標的になった麗音は、雪のふる朝、非常階段からつき落とされ、生死の境をさまようことになります。波立つのをおそれて、真実をかくし、麗音の過失による事故とする大人たちに、子どもたちは立ち上がります。正義と勇気をよすがに…。    『作者あとがき』より
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 この本を読み終えたとき、思わず息子に向かって、「こんな(子どもとキチンと向き合うことをせず、世間体ばかり気にする)大人にならないように気を付けるよ。」と、言いました。
 昨今、子どもの心の教育のことが問題になっていますが、私たち大人が、不器用でもいいから精一杯生きる姿を見せていくことこそ、今一番求められているのではないでしょうか。
 息子から「ちゃんと大人をやってよね!」と、叱咤激励された読書の秋。この本は、小学生よりも、大人必読の書ではないかと思い、ご紹介させていただきました。

  副住職 大平一誠

☆秋の夜長のお薦め図書☆
『ハードル〜真実と勇気の間で〜』
    青木和雄 著  金の星社
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