テレビ出演の後日談
 先日、TBSの『学校へ行こう!』という番組に、《マイケル・ジャクソンのダンスを完全コピーするお坊さんとその息子》というキャラクターで息子と一緒に出演し、マイケルの『BAD』と『スリラー』のダンスをテレビで披露する機会に恵まれました。
 中学生の頃からジャニーズとマイケルに憧れ、見よう見まねでダンスを続けてきた私にとって、今回のテレビ出演は、V6と同じステージに立ち、マイケルとテレビ画面の中で間接共演するなど、本当に最高の思い出になりました(孝行息子に感謝いっぱいです!)。

 しかし、人生いいことばかりは続かないものです。その後、『学校へ行こう!』の年末企画『親子ナイトフィーバーグランドチャンピオンシップ2003』への出演が決定したまではよかったのですが、直後に、本物のマイケル・ジャクソンが児童への性的虐待の容疑で逮捕されるというニュースが飛び込んできました。そして、マイケルの容疑が晴れるまで、私たちの出演も無期延期されることになったのです。

 ディレクターの方からその旨の連絡を受けた私は、「せっかく練習したのに、よりによってどうしてこの時期にこんな事件が起きたんだ!」と思ってしまいました(このように問題の責任を他に求めていく生き方を「外道」といいます)。仏教は、私たちの苦悩の根元を他のものに求め、それをどうこうすることで苦悩を解決させようという責任転換の教えではなく、自分自身を深く見つめさせることで苦悩を根本から解決させようとする教え(これを「内道」といいます)です。

 マイケル逮捕のニュースで一番傷ついているのはマイケル本人(あるいは容疑が事実なら、虐待を受けた子やそのご家族)です。それなのに、好きなダンスで2回もテレビ出演したことも忘れて、「もっともっと!」という欲望(このように一つの欲望をかなえても、次から次へと欲が出てきて苦しむことを「求不得苦」といいます)から、そんなことも見えなくなっていた自分は、本当に小さな人間だなぁと思い知らされました。

 何はともあれ、二度とない人生、一瞬一瞬を悔いの無いように生きたいですね。

  副住職 大平一誠

 追記

 現時点で、マイケルへの容疑事件で言えることは、マイケルの自宅に家宅捜査があったことと、マイケルが児童への性的虐待の容疑で逮捕・保釈されたこと、そしてマイケルの公式サイトでの本人の発言(マイケルは「法廷でこの事件に立ち向かう」と言っています)だけのはずです。今マスコミは憶測でいろいろ報道していますが、憶測は偏見を助長するだけです。憶測が助長した偏見による差別やイジメほど払拭するのが困難なものはありません。かつて不治の病と言われたハンセン病は、1943年に開発された特効薬によって治癒するようになったにも関わらず正しい認識はなかなかされず、平成8年まで差別的な法律が存在するなど、国レベルでの人権無視が続けられたように…。 
 私も憶測でものごとを判断しないよう気を付けたいと思います。(2003年11月)

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